2021年8月8日日曜日

運転免許からの道 -逆行の夏

いつもの梨を同僚がくれたその日、私は梨を受け取ると予定より一時間早くその場所を出発していた。理由のひとつは梨がたまらなく食べたかったということ。
豪雨の中、いつもとは違うインターから高速にのってすぐ、私と後続車の間に白の覆面クラウンが割り込んでこなかったら、スピードオーバーを犯していることには気づかなかっただろう。
「こんにちは、すみませんね」と男はスピーカーからの轟音とは一転、愛想のいい態度で言った。私は心底怯えて彼を見た。どうしてだか知らないが、彼は私に対していきなり恐縮してみせたのだ。
「ちょっといいですか」と彼、それだけで言いっぱなしにさせるわけにはいかなかった。限度ってものがある。「あの、どうしたらいいですか?」
「交通機動隊です」
男は私を運転席から連れ出すと、風が吹き荒れて裏返しになっている傘を差し掛けてくれた。
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(要約)
スピード違反ではじめて捕まりました。戒めのために記録しておきます。

大井インターから湾岸線に乗り、前に車がいなかったのでアクセルを踏み込んだら、突然後ろから鳴り響くサイレン。一瞬で「あ、自分だ」と察しました。咄嗟にメーターも見ました。でも85キロって高速普通じゃない?結果そこは高速ではなかったのですが。
どうしていいのかわからず減速し、車線を左に寄せて止まりかけたら止まらないでと後ろから叫ばれる。オーディオのボリュームを落としても、何を言われているのか聞き取るのがとても大変で、いっそ緊急時に警察用割り込み信号でメッセージがカーナビに表示されるようにすればいいのにと後から思いました。いやよく考えたらこれ怖いな。やめよう。
道路脇に止めて、申し訳なさそうなお兄さんにエンジンかけたままワイパーだけ止めて後ろの車に移るように指示をされる。そして免許を確認され、スピード違反に伴うありがたいお説法を頂戴しました。
「ここ速度制限60キロなの知ってました?」「いいえ」
「メーター見てました?」「いいえ」
「今日こんな天気だし、気をつけて運転しないとね」「はい」
「今日はどこまで行くんですか?」「●●まで」
「ちょっと遠いですね。急いでたんですか?」「いいえ」
「これから気をつけて運転してね」「はい、承知いたしました」
そしてサインを2回書き、指紋を取られ、振込票を渡され、開放していただけました。
指紋。
前科一犯の重み・・・

心の底から高速だと思っていただけなんですうううう!
だってETCも入り口でなんかムニャムニャ言ってたもんんんん!
という心の底からの叫びも虚しく2点マイナス、反則金15000円。
梨の代金にしては高すぎる。シャインマスカットか。
しかし、勉強になりました。急いでもおらず人を乗せてもおらず何よりこれが派手な事故とかでなかったことに心の底から安堵しました。今日一日で心の底絞りきりました。
車を出発してもしばらく後ろにつかれ、まさかこのまま●●までついてくるんかい・・・とビビりましたがそんなことはない。
別れ際助手席の人が会釈をしてくれました。優しい人でした。再犯だとこうはいかないかもしれんが。
 
帰路は高速に乗る元気がなかったので一般道で。でも気を抜くとやっぱり
357の直線でブッちぎりそうになる。これ道路が悪くない?To err is human! To forgive divine! 悪いのは組織かシステム、神よそれに道路を追加されたし。
それまで無事故無違反でしたので、明日から3か月間、無事故、無違反なら点数は加算されないとのことです。お天道様はいつもあなたを見ていますの精神で、スピードと一時停止と信号を守ります。国道357号、てめえのツラ覚えたかんな。

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免許がもう二度と昨日と同じ色の免許に戻らないことは明白だった。私は運転を愛し、そして多くのもの(まだ見ぬゴールド免許と社会的信用)をそこに捨て去ったのだという気がした。

(John Varley,  Retrograde Summer.)

余談:
先日実家に帰宅した際父親にこの出来事を話したら
「これから運転するときは気をつけろよ、ちゃんとバックミラーみて、うしろのやつが『二人組じゃないか』と『青い制服着てないか』しっかり確認するんだぞ!」
と、斜め上のアドバイスをもらった。何の役にも立ちやしないよ、お父様・・・。

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